好意を向けられるのが怖い。

本当の私を知ったらあなたはきっと離れていくでしょ?

 

そう思って、わざと実際の私より変な振りをして、さっさと離れて行って欲しくて、

でも

 

 

知り合いの夫婦。

私の事を「愛するむすめ」と呼んでくれる人たち。

 

二人が他にも数人可愛がってる女の子がいるのは知ってた。

だから頻繁にポストカードを送ってこられても、プレゼントが送りつけてこられても気にせずにすんだ。

 

遊びに行ったとき

「君は特別だ」「愛してる」

と言われた。

「あなたたちは私の事を何も知らないでしょう」

そう言ったけれど、逆効果だった。

「君が君のことを知らないんじゃないのか。君は素晴らしい」

だって?泣きそうだった。微妙な嬉しさと、罪悪感で。

 

メッセージを送るときたまに「ママ、パパ」と書いた。

すごく喜んでくれたけれど、毎回はできない。私は二人のことを「ママ」とも「パパ」とも思ってないから。

 

全くの赤の他人の私の何を知っていて、どうして好きでいてくれるのか分からないし、向けられる好意が理解できなくて怖い。私は彼らを騙している気がして仕方がない。

  

「私達は子どもいないし、適当に大人しそうな子と親子ごっこがしたいだけよ」

と本音を正直に言ってくれてたら、安心してもう少しいっぱい「ママ、パパ」って書けたと思う。

何も悪い事なんて(少なくとも彼らに対しては)したことないと誓えるのに、どうして?

 

 

小中と同級生だった知り合いから今更告白された。

 

女に飢えてて、名前知ってる女全員にそういうくだらないことをしているんだろう、と思った。電話が掛かってきたので「チャンスは全く無いし、くだらないことをしてまわるのはやめた方が良いよ」と言った。私にはお見通しだ。

 

「就職して生活も落ち着いてきたから連絡した。ずっと好きだった。誰にもそんなこと言ってない」

みたいな返事だった。

 

みんな大抵私が欲しい答えはくれない。

私は正直にしているのだから向こうも正直に返事してほしい。

「アハハ、やっぱバレたかぁ~。てめーなんかをまじで10年間好きでいるやついるわけないもんなー。ラッキー狙って適当に書いた!!」

そう言ってくれたら、私は笑って、

「もーバレバレ。ま、引っかかる人いないと思うけどがんば~」

って言って、二人で和気あいあいと今まで通りのただの昔の同級生に戻れたのに。

 

頭は良くないけど真面目な人だったのに。人は10年もあれば真剣な声音でウソをつけるクズになれるんだと知った。いつまでも成長できないのは私だけらしい。

 

「過去を美化してるだけだよ、ほら、私すごく性格悪かったじゃん。忘れたの?街コンとかそういうの流行ってるんでしょ。行けば?」

アドバイスしたのに

「彼女が欲しいとか、そういうのじゃないから」

と言われた。

 

だったら何?だったら何?やめてよね。

真剣に10年間私を想ってたとか、私は絶対に信じない。

信じない代わりに、簡単に落とせそうな女だと思われたんだと、本気で信じてる。

ていうか実際そうでしょ。

 

 

最後に好きになった人

「そのままでいなよ。そのままの君が好きになったんだよ」

その割には私に勤勉であれだとかスカート履けとか外で酒飲むなとかウザかった。

 

好きじゃないふりをしてた。自分で自分も騙してた。

「嘘つき」「本当の私を君は知らないでしょ」

私は彼に「好き」と言われるたびにそう言ってた。

 

最後の電話で

「私は見た目と中身が違うって言われる」

と言ったら

「僕はそうは思わない」

と返された。

 

「好きだったのは君の黒い瞳だよ。でも中身は嫌いだ。ジャパニーズガールは簡単だって聞いてたのに」

そう言ってくれてたら私はきっと安心できたのに。

 

 

褒められるたびにどう返事をしていいのか分からなくなる。

どこかで「褒め言葉を素直に受け取らないのは失礼だ」と読んだから。

 

「(お世辞と言うか大ウソだけど)美人ですね」

「(幼稚園児が左手で描いた絵よりは)上手な絵ですね」

「(目が二つあるところが)あの女優さんに似てますね(あ、鼻も口も一つだ)」

「(その辺のカエルよりは)頭良いんですね~」

 

私に向けられる褒め言葉なんて大体実際はこんなものなのだと思う。

気にしないし、むしろそう言ってくれた方が嬉しいから(カッコ)の中もきちんと発声して欲しい。

 

そしたら私も何の屈託もなく、心からの笑顔で

「でしょ?ありがとうございます」

って言えるのに。

 

そもそも褒め言葉なんて私にはもったいないから最初から言わないでくれたらいい。

 

こう書くと、私が普段褒めたくもない人を無理に褒めてるように見えそうだけど、大抵は褒めたいことを素直に褒める。でも他人がそうしているとは思えない。私に褒めるところがないからだ。

 

いや、分かってる。みんな深く考えずにお世辞とか言っているんだ。別に誰も私について一々考えてお世辞を言うはずがない。

外国人がちょっと日本語喋るだけでみんな「ペラペラ~スゴイ~」と言うのと同じだ。(これは私もやる)

 

自己肯定感が低いからこうなるとか知ってる。

でも仕方ない。

上げる方法が分からないから。

 

自分に向き合ってありのままの自分を見つめて

とか。

 

私は空洞なのに、自分を見つめても、空洞が私を見つめ返してくるだけだ